米島に捧ぐ

〜米島に話したいことメモ〜

本レビュー:どうしても頑張れない人たち~ケーキの切れない非行少年たち2

社会人になってから頑張っても頑張っても進歩がないと感じる回数が増えた。頑張ってるつもりでも何も学んでない自分を嫌というほど意識させられ、怒られることに萎縮し、徐々に無気力になり、気が付いたら頑張り方がわからなくなった。

 

この本の「頑張れない人」という言葉を見た時、自分の中の世の中は常に「頑張れる事が前提」で動いていたのだと意識させれ、今の自分が読むべき本だと思った。

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前作の「ケーキの切れない非行少年たち」と同じく、認知能力が欠けた少年たちの生活に着目している一方で、コミュニケーションやどう個人や社会が支援できるのか、といった具体的なアプローチについて踏み込まれている本だった。

一人で自分を変えられるような子供なら少年院には来ていない、というごもっともな指摘から始まり、いかに彼らの変化にとって支援者が重要な存在であるか、といった点について踏み込まれいる。

さらに本書ではその支援者が更に支援を必要としている事実にも触れられている。最大の支援者だった親は、子供の非行に悩まされ被害者の家族や近所の人々に謝罪をし、疲弊しきった状態である事が多いという。親の負担を軽減してあげつつ、それでも子供が社会復帰するために親に支援者でい続けてもらえるようにするのか、が少年院で働く者の仕事の一つだと書かれており、少年院のイメージが変わった。

 

「親が変わるから子供が変わる」と言われがちだが、実は子供が変わった姿を見て「この子はまだまだ変わっていける可能性がある」と期待を持つことができ、改めて頑張る子供の横で並走してあげようと思えるのだという。そしてそう感じてもらう施策の一つに、保護者会で来てくれた親に対して、子どもの口から「来てくれてありがとう」と感謝の言葉を伝えるよう、保護者会の前に「練習」しているのだという。

手を挙げられたり怒鳴られたり、一緒に住んでいたときには悩みのタネだった子どもに会うに際して、少なからず不安を抱えていた保護者は、例え作られた姿だとしても子供の感謝の言葉を聞いて心を打たれる。最初のきっかけは表面的でもいいんだ、歯車が回り始めるって事が一番大事なんだと考えさせられた。

 

また面白かったのは「おわりに」で記載されていた同業者への眼差しだった。本書で述べられている内容は勉強会を通じて何度も発信していたが、その時は「そういった見方もあるのか」といった程度の受け止めしかされていなかった。しかし世間で評価され始めると、そこで初めて「理解してみよう」と議論が活発にされる思うようになった、と述べられていた。

同業者に真剣に受け止められるには、言ってみれば外の人間/同業者以外の人に認められてから、というのは情報の広がり方として非常に興味深いポイントだった。少年院だけでは変えきれない問題がここでは語られていた。自分自身も身近にこうした「頑張れない人」がいるのかもしれないと日々の人間関係を思い返したし、自分自身が一向に成長を感じられない経験があったからこそ他人事とは思えなかった。

 

いい本だった。今日から手に入れた本はその日中に読む習慣を開始。積ん読しない読書習慣ができるかチャレンジ。

 

P.S. マクドナルドでリモート会議していたおじさんが「いま喫茶店に来てるんですよ」と言っていて、マックカフェのブランドもも捨てたものではないと感心しました。(なお、マックカフェでも何でもないマクドナルドでした)