PayPayとチップ:支払い時に揺れ動く感情
「ここは俺が奢るよ。」
彼の住む地域にわざわざ来てくれたから、とラーメンを奢ってくれようとしている。
久しぶりに再開した友人だったのでどの距離感で接すればいいか探り探りだったが、
彼は学生時代に変わらず思いやりに溢れたいい人だった。
「ごめん、現金ないから後でPayPayで送るわ。」
・・・いや、それは違うだろ!!
え、いや、奢るってそういうことなのか!?
・・・友人の親切心にケチをつける酷い大人になってしまったよ、わたしは。いやでもそれは奢るじゃないじゃん!お金をあげるよ、に近い概念じゃないのか?奢るとは全く財布に触らないでいいよってことじゃん!
無機質になった電子マネーが奢るという行為も無機質にしてしまったのか、と少なからぬショックを受けた一日だった。
決済で心がかき乱されることは過去にもあった。アメリカで電子決済移行期に起こった出来事だ。
当時自分には行きつけのアジアンフードトラックがあり、常連になりほぼ毎日のように通っていた。注文カウンターの端にぽつんとチップ用の瓶が置いてあったのだが、チップを強要するような作りではなく、入れていく人も20人に1人位だったと思う。
ある時、そのお店がSquareというiPadでクレカ決済の対応も出来る電子レジのサービスを導入した。サービスを導入後には自分含めクレカで決済する人も増え、お客からしても使い勝手がよくなる素晴らしいサービスだった。
問題はチップだった。支払い額の確認画面の後に、チップの入力画面が現れたのだ。0円を押して店員さんに戻すと、「ああ・・・0円か・・・」というあからさまな落胆な姿が目に見える。いやいやいや元々私は0円だったじゃないですか!と思う一方で、手数料が取られる分お気持ちでもチップが欲しくなったのだろうか、と申し訳ない気持ちになる。
チップをそこまで期待していなかったお店がチップを意識せざるを得なくなり、チップを入れた人だけが目立っていたのに、チップを入れない人も同様に目立ってしまう状況が作られてしまっていた。その日の出来事がショックで、徐々にそのお店に行く頻度は少なくなっていった。
P.S. 8時半に通勤電車内でタイマーがなると、リモートの起床時間は8時半なんだなと思ってしまいますよね。