米島に捧ぐ

〜米島に話したいことメモ〜

創価学会と谷川俊太郎:忘れられない面接官の話

本屋にて「谷川俊太郎の質問箱」という本を手にとる。村上春樹の質問箱に着想を得たのか、一般人からの質問を詩人・谷川俊太郎が答えるという面白そうな企画。数ある質問の中で、就活中と思われる大学4年からのお便りが届いていた。

「もし、谷川さんが会社の人事部の人なら、入社試験でどんなことをしますか?谷川さんなら、何て訊くのだろう?とても興味深いです。」

至って普通の質問に思えるが、質問先が詩人であるのが興味深い。この質問に対して谷川俊太郎はこう答える。

「質問も話しかけることもせずに、柔らかい表情で、黙って相手を二分間ほど見つめる。それから、その二分ほどのあいだに、相手が何を感じたか、何を考えたか訊いてみる。」

空白に思える時間の中で何を感じ取り言葉にするのか、左脳より右脳を試されそうな面接だ。先日どこかで読んだ本でもハーバードの学生に美術館で一つ作品を選び、その作品の前で何時間か過ごし、心の動きを発表してもらう課題が出されていると記されていた。最近はこうした感じ取る力が重視され始めているのかな。いずれにせよ所謂就活における王道の質問ではなく、こうした独自の視点で面接を行うことで新しく生まれるマッチングがきっとあるだろう。

 

面接の話で思いだすのは、新宿南口付近のオープンスペースで面接をしていたベンチャー企業の人事だ。午後6時、自分の斜め前に座ってた新卒担当のその人はZOOM越しで面接を始めた。

面接官「なぜこの大学を選ばれたんですか?」

学生「XXXX

面接官「でも、その志望理由だったら他の大学も候補に上がると思うのですが、もう少し他にも理由があったりしますか?」

学生「XXXX

面接官「いやだから、どういった所に惹かれてこの大学を決めたのですか?」

学生側の言葉は聞こえなかったが、大学をどう決めたのかで5分以上ラリーを続けている。企業への志望理由ならわかるけど、大学なんて深ぼってどうするんだろう・・と悶々としていると、再度面接官が口を開く

面接官「だから、なんで創価大学を志望したのかを聞いてるんです。」

感の鈍い自分でも良く分かった。「創価学会員だからです」と自分の口から言わせたいのだ。面接官が言わせたい理由はさっぱり分からないが、なんとしてでも学生の口からその一言が聞きたい面接官は同じ質問を粘り強く繰り返す。こんなのお互いにとって無駄な時間あるんだ、と呆れてしまう程に無駄な時間だ。

しかしこれには学生側も対抗する。自分の宗教を開示したことで見られ方が変わった経験があったのだろう、決して自分の宗教について開示しない。絶対に折れないぞという信念がZOOM越しに伝わってくる。その信念だけで部外者としては非常に好感が持てた。

創価学会と言わせたい人事 vs 決して創価学会とは言わない学生の不毛な攻防は結局15分程続き、30分の新卒面談は幕を閉じた。間違ってもこんな企業には行ってはいけないよ、と伝えたい気持ちでいっぱいだった。

 

「今、ここで何を感じたのか」を重視する谷川俊太郎の面接スタイルを奴に教えてあげたい。

 

ちなみにこの「谷川俊太郎の質問箱」で届いていた質問で「彼女の機嫌を直すには何が一番効果的ですか?」という質問があった。それに対して谷川俊太郎は「怒らせた原因が何か考える。その原因が自分にあると思ったら、相手の目を見て、マジであやまる。」と返答していて、聖人イメージ満載の谷川俊太郎が「マジ」って使うんだと笑ってしまった。イメージで語っては駄目だね。

 

PS:先日2時間ホイル焼きした焼き芋を味噌汁の具材にした贅沢な味噌汁をいただきました。2時間って自分の人生で味噌汁づくりに費やした全時間より長い気がする。