米島に捧ぐ

〜米島に話したいことメモ〜

3人の研究者、蚊の生体を暴く。「あなたは嫌いかもしれないけど、とってもおもしろい蚊の話」を読んでみた

東京駅を歩くとキーーンという音が響き渡るエリアがある。ネズミよけのために設置している音なのだそうだが、これが「モスキート音」なのか、「モスキートーン」なのか。その真実が知りたくて蚊に関する本を手にとってみた。

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この本では3人の研究者が蚊の生体について子供でもわかるようにまとめてくれている。本書の所々に世界中で行われた蚊に関する研究が散りばめられていて面白い。更に「そんなこと暇人しかやらないわよね~」と一般人の感覚のコメントを入れた後で、でもそうした一見価値を生み出さなそうな研究が思いもよらぬ発見につながる、と学者目線で重要性を説いている点も非常に好感が持てた。

 

■なんで蚊は人の血だけを吸うの?

実は蚊が吸血している血は人間だけのものではなく、猫など他の動物の血液も吸うらしい。驚いたのはカエルの血を吸う種類もいるらしく、カエルの鳴き声で蚊が集まるのか、といった実験が行われ本当に集まったという結果が出ているらしい。

 

■血を吸わないといけないの?

血じゃないと卵は作れないのか?代替の養分を設置しておけば蚊に刺される確率が下がって、蚊とより親しく共存できるんじゃない?と考えた研究者がいたが、今の所血に勝る特別な栄養はない、とのことでした。(ここは詳細が省かれているのでよく分からなかったです。)ちなみに蚊の体内には花弁など主食用と血液用の2つの胃腸があり、花の蜜や樹液を食べる時は腹側吸胃で、血を吸う時は中腸にある胃に蓄え、血の養分を消化して卵を育てているそう。牛と同じく複数の胃袋を使い分けてるなんて小さな体の中に精密な構造が成り立ってるんですね。

 

■他の人よりよく蚊に刺されるのはなんで?

これは遺伝の影響が大きくあるらしい。一卵性双生児と二卵性双生児で蚊の吸血されやすさを研究したところ、前者は刺されやすさの度合いが同じで、後者は二人の一致度が一卵性双生児程高くない、という結果がでている。他にも二酸化炭素、体温、服の色などを様々なものに反応して吸血対象となる動物を探しているらしいが、遺伝は大きな要因の一つらしい。また研究の過程で自らの血を吸わせて太らせたこともあるらしく、「よく刺される人は研究者にもってこいですよ」と心強いコメントも記されていた。

 

■蚊の体内の血液DNAを分析?

映画ジュラシックパークに関する笑ってしまうコラムがあったのでご紹介。ジュラシックパークではジュラ紀に恐竜から吸血したと思われる蚊の化石から、血のDNA分析を行うことで現代に恐竜を蘇らせるシーンがある。こうした「蚊の体内の血液分析」は映画内だけでなく実際に行われており、蚊がどの動物から吸血するのか、蚊の体内で病原がどう変化するのかについて研究が行われている。

このシーンについて、まずジュラシックパークで登場した蚊は、触覚からしてオスで、そもそも卵を育てないので血を吸わない性別である。またオオカと呼ばれる「花の蜜のみで卵を育てられる」種類でメスですら吸血を行わない珍しい蚊の種類なのだそう。プロの視点格好いい・・!と関心したし、「私で良ければジュラシックパークの制作に呼んでくださいよ~」というおちゃめなコメントがとてもかわいかった。

 

身近に人類の天敵として存在してきたのに、知らないことばかりだった蚊の生体がしれてとてもよい本でした。

 

P.S.「峠」という漢字、山を上ったり下がったりしますよ、って事が分かりやすくて好きな漢字です。